日本の伝統を発展させた「高円寺の阿波おどり」

日本で阿波おどりといえば徳島県が有名だが、高円寺の阿波おどりも際立ったオリジナリティーを誇っていることから、多くのファンを獲得している。
高円寺の阿波おどりは、一拍子と二拍子のリズムを自由自在に行き来する独自のスタイルを打ち出しているのが大きな特徴だ。
南北には商店街が広がり、昔ながらの個人商店が点在している高円寺だが、1年に2日間だけは全国から多くの観客を集め、太鼓と鉦の轟音に占拠される。高円寺阿波おどりが披露されるお祭りの期間中は、街が凄まじいグルーヴの渦に飲み込まれるほどだ。

当初は商店街の活性化を目的として始められた阿波おどりだったが、観客数が増加し、全国的な人気を得たことによって、阿波おどりの技術や理念そのものを突き詰める動きが出てきた。その影響により、独自の進化を遂げ、生み出されたのがオリジナリティの高い高円寺の阿波おどりだ。

お祭りの期間中は、ブラジルのサルヴァドールのような祝祭空間が生み出されているが、その一方で、三味線や笛の音が鳴り響く雅なムードもある。そして、街中に響き渡るリズムとダンスに乗る踊り手たちが阿波おどりへの情熱と色気を振りまきながら人々を魅了していく。そこには、紛れもない非日常がある。
阿波おどりという伝統的な催しは、徳島という発祥の地から遠く離れながら、高円寺を訪れる人々の奥底に眠るお祭りのスピリットに火を点け続けている。踊り手たちがプライドを持って披露する高円寺の阿波おどりは、高いオリジナリティーが評価されている街のアイデンティティでもあるのだ。